僕も日本にいたときはソフトバンクの携帯を使っており、そのまま日本から出て来てしまったので解約するときは結構苦労しました。 このソフトバンクが世界中で行っている投資事業ですが、これもなぜか日本語で検索すると日本のメディアによる記事があまり出てきません。 出てくるのは日本語化されたウォール・ストリート・ジャーナルかブルームバーグ、あるいはITに特化した媒体の記事がほとんどです。 ソフトバンクの有利子負債は現在15兆円にのぼると言われており、日本一国の一年の税収の約1/4にあたります。サウジアラビアのファンドなどからも資金を借り入れており、年間7%の配当を支払う義務を負っています。 このソフトバンクでも、去年11月には「真っ赤っか」な決算内容でわずかに日本メディアに報じられました。 真っ赤っかというのは大げさではなく、それ以前から正気では考えられないような投資を行ってきていました。 日本以外では例えばブルームバーグなどからは「ブランド戦略が何も見えない意味不明な巨大投資機関」「福袋のような銘柄選択」などと揶揄されており、アジアからの脅威というよりも困惑と嘲笑の対象になっています。 日本人はよく、世界から笑われている・世界が感嘆している、というように自分が世界から二者択一的な評価を得ていると思うことが好きですが、 ソフトバンクはまさに、世界から笑われているケースの典型です。 世界的にもはや、ソフトバンクの名前が入った記事はほぼ自動的に苦笑カテゴリーになっています。これは意地悪などではなく、本当に理解不能な投資を繰り返してきた結果なので、そのうちのいくつかを列記していきたいと思います。 1.犬の散歩代行アプリ、ワグ ソフトバンクの理解不能案件の代名詞にもなりつつあるこの投資は、去年の年末にソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資を引き上げることで幕を下ろしました。 幕を下ろすまでにソフトバンクが投資した額はおよそ330億円。持株比率は50%弱でした。 犬の散歩を誰かに頼みたい飼い主と、散歩をやりますという人をマッチングさせるだけのアメリカのサービスですが、ソフトバンクは一昨年の初めになぜかこの会社の企業価値を約700億円と評価していました。 2. インドのホテルチェーン、オヨ 1番目の犬の散歩代行アプリの前には、インドのホテルチェーンにも投資していました。この時点で組み合わせのわけが分からなすぎてちょっと気持ち悪くなります。 価格決定システムなどを徹底的に合理化したことで急成長したオヨ・ホテルズアンドホームズですが、今年に入ってから既に中国とインドで1,800人をリストラしました。ソフトバンクはこの会社に一昨年の時点で約1120億円を出資しています。 3. ロボットアームで作るピザ屋、ズーム 本当に何がしたいのか分かりません。ソフトバンクはロボットでピザを作るズームというアメリカの会社にも、約410億円投資していました。今年に入ってから従業員の約半分を整理し、また祖業であったピザ事業を閉鎖することが報じられています。一昨年の段階でソフトバンクはなぜかこの会社の企業価値を約2500億円と評価。最終的に約850億円を出資する予定だったようです。 ソフトバンクは現在2号ファンドの設立を計画しており、2号ファンドではロボットでハンバーガーを作るクリエーターという会社にも出資する予定であるとされています。 4. テナント又貸し業者、ウィーワーク 去年の「真っ赤っか」な決算の主要因を作った会社です。テナント用の物件をおしゃれに改装してコワーキングスペースとして又貸しするだけの会社です。ソフトバンクはここに合計1兆円以上をつぎ込んでいますが、価値は既に半分以下になっていると報道されています。ソフトバンクは当初この企業の価値をなぜか約5兆円と評価。創業者の麻薬問題や隠し損失などのスキャンダルで現在は約1兆円の企業価値とされています。 クライアント企業が自社で本社設備を用意しなくても手軽に賃貸出来るようになる優れたビジネスモデルとソフトバンクは評価していましたが、ソフトバンク自身と同じようにコアになる技術や特許があるわけではないので誰でも真似出来ますし、特に目新しいわけでもありません。 創業者は投資家に対してIT企業であると吹聴していたという情報があります。実態は不動産業なのに、ソフトバンク・ビジョン・ファンドはもしかしたらこれを本当に信じていたのではないかという懸念が拭えません。この会社が現在黒字を出しているのは日本を含めて2市場だけです。孫正義は数年以内の黒字化は簡単と説明していますが、どの会社でも出来るビジネスなので新規参入が全くなかった場合の想定に過ぎません。1兆円に及ぶ天文学的な失敗の結果、2号ファンド設立の先行きは危うくなってきていると報じられています。 孫正義は投資家に対して、世界のAI事業を独占する戦略を披露しています。この方向性自体は正しいように思えますが、実際に投資している先がAIとどう関係するのかよく分かりませんし、特に4番目のウィーワークなどは投資以前の基本的な企業分析を誤ったかそもそもしていなかったのではないかと思わざるを得ません。 ソフトバンクグループで実際に現金を稼いでいるのは今年に入ってからは携帯電話子会社のソフトバンクだけと言われており、ここからの収入もほとんどが利払い費に消えるという試算もあります。大量の資産を担保に天文学的な債務を抱え、福袋のような脈絡のない企業群の株式を多く持ちすぎているために売却しようとすると需給バランスが崩壊してしまうという状態はまさに現在の日本の財政状態の縮図と言えると思います。 日本のメディアはここに報道のメスを入れて、ありのままを日本の視聴者に伝えるべきではないでしょうか。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-09/Q29PS76K50XS01 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-01-10/Q3W3FD6JIJUR01 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200109-23863870-bloom_st-bus_all https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-26/PZYY9S6S972801 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-25/Q1H2YODWX2PV01 https://jp.wsj.com/articles/SB12708392186520463701404585595510380874530 https://jp.reuters.com/article/wework-softbank-breakingviews-idJPKBN1X205O https://jp.reuters.com/article/sofbank-breakingviews-idJPKBN1XG0EM https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1911/06/news131.html
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