本日先程アメリカと中国の貿易交渉が第1段階の合意に達しました。アメリカのS&P500は記録的な高騰を見せているので、ゴールドの価格は下がるかと思いきやむしろ微妙に上昇しています。
アメリカとイランの緊張が解消した直後はさすがに低下しましたが、でもそれほど低下することなくその後も過去7年間の最高値水準に留まっています。 FEDが利下げをしてもゴールドの価格は上昇し、貿易摩擦が一時落ち着いても上昇し、株価が上昇してもゴールド買いは止まりません。何をやってもゴールドが買われている状態です。 一体世界は何の理由でゴールドを買い漁っているのでしょうか。 現在のところ、考えられる大きな理由はインフレ予想です。各国中央政府が相次いでマネーを市場に注入しているため、マネーの価値が近いうちに下がる、つまりインフレが起こることを投資家が予測してゴールドに避難しているのかも知れない、ということです。 しかし世界的な国債の年利回りを見ると、日本の10年国債だけ去年の下旬から不気味に上昇していますが米国債もドイツ国債もイギリス国債もそれほど上昇していません。国債の利回りはインフレの気配がすると上昇する可能性があるため、現在のところインフレの予兆はないように見えます。 ところが、本日付のフィナンシャル・タイムズが報じたところによると、世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーターの投資オフィサーであるグレッグジェンセン氏は米ドルの信認が低下し、外国政府がゴールドに頼らざるを得なくなるようになる可能性が視野に入ってきたと考えているようです。 グレッグ氏は ”急激に起こるかも知れないし、もっと時間がかかるかも知れない。しかし、明らかに(ドル信認低下の可能性は)起こりうる範囲に入りました。地政学的な争いを目にして、一体どれだけの国外(米国以外ということ)機関が米ドルを保有したいと思いますか?代わりになにか別のものを保有するとしたらなんでしょうか?ゴールドですよ。” と述べています。理由として、世界的に中央銀行がインフレを助長する方向で足並みを揃えていること。米国の累積赤字と貿易赤字が際限なく膨張していることをあげています。 ブリッジウォーター社は世界で18兆円の資産を運用していると言われています。グレッグ氏はフィナンシャル・タイムズに、主要各国の中央銀行はもはや利率を通常レベルに戻すことは出来ず、アメリカを含めてインフレを危険なレベルまで許す可能性があること。それによってゴールドの価格は今から更に30%上昇し、オンスあたり2000ドルを上回るようになると語り、投資家のポートフォリオで重要な役割を果たすようになると述べています。 https://www.bloomberg.com/quote/DXY:CUR https://www.cnbc.com/2020/01/15/trump-and-china-sign-phase-one-trade-agreement.html https://www.ft.com/content/1c90b8d6-36f6-11ea-a6d3-9a26f8c3cba4 https://www.bullionvault.com/gold-news/gold-price-011520201
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(この記事はアメリカのスレイマニ司令官殺害以前に書かれたものです)
日本のメディアには、米ドルが下がっていることを報じてはいけない自主規制でもあるのでしょうか。 昨年末の12/30、日経新聞関係者ツイートで以下のように書かれました。 ”株・債券・金の同時高。緩和マネーが潤沢とはいえ、すべてが上がる現象が持続的とは思えず、2020年には、どれが正しく、どれが間違っていたのかの答えが出る?” https://mobile.twitter.com/isayashimizu/status/1211543728625573890 日経新聞の記事では一行目からこうなってます。 ”2019年は世界的な利下げを追い風にあらゆる資産の価格が上昇した。” https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53992110Q9A231C1000000/ 何を言ってるのかよくわかりません。 たとえばロイターではほぼ同日の同じ相場を話題にした記事で、タイトルから”Global stocks end 2019 near record highs, dollar slides”としていて米ドルの下落を強調しています。 記事の第1文目は”NEW YORK (Reuters) - The dollar slid to a six-month low on Tuesday”で始まります。slidとはずり下がるというようなニュアンスです。 ロイターだけではなく、ブルームバーグもテレビで株高に合わせて米ドル安を強調していました。世界的には誰もすべてが上がってるとは思ってないですし、株高と米ドル安を比較している世界の報道に対して 日本の報道だけずれています。そもそも、日経新聞以外のメジャーな国内メディアは株高すらあまり報じていませんでした。 前の記事にも書きましたが、米ドルは通常安全資産と目されています。それに対して株などはリスク資産なので米ドルと株価は反対の方向に動きます。 しかし、同じく安全資産と目されているゴールドも米ドルと同じように安くなっているのかと思いきや株価と一緒に高くなっています。 これについて、上に挙げたロイターの記事では米中貿易戦争に前進が見られるため、投資家が前向きになったことによる、としています。 しかし、それだとゴールドも値上がりしている理由が説明出来ません。 去年、アメリカの中央銀行にあたるFRBが9月と10月に利下げを発表しました。中央銀行の利下げは債券の値段を上げ、その分投資家に株式を買わせようとする試みでもあります。 なので投資家たちは持ってるお金をより儲かりやすいリスク資産に回し、ゴールドを売るのかと思いきや2回ともゴールドの値段を上げました。 2回とも、FRBの発表数日前からジリジリと値段を下げ続け、利下げが確定してから一気にゴールドを爆買している感じです。 日本でも、不景気になると中央銀行に何とかしろという圧力が高まります。しかし実際に中央銀行に出来ることは利下げか利上げだけです。この2つのボタンしかないんです。 今回の利下げの背景には、なぜか株式相場が自分の評価だと思いこんでいるトランプが2020年の選挙で再選を有利にするためにFRBに圧力をかけ続けたという見方があります。 トランプは自分のおかげでアメリカ経済が好調になっていると吹聴している割に、不景気対策ボタンである利下げを強要しているわけで言行不一致ですが、 FRBのパウエル議長も、アメリカ経済は好調だが、世界的なリスクが高まっているために利下げする、とトランプと同じようなよくわからない説明をしました。 この「世界的なリスクの高まり」を米中の地政学的リスクと読んだ投資家がゴールド購入に走ったという見方があります。 また、利下げの結果債券が割高になったので、ゴールドと遜色がなくなってしまいゴールドを買った、と分析する解説員もブルームバーグにいました。 どちらにしろ、ゴールドが買われています。 ゴールドだけではなく、大規模な合併をしたゴールドの採掘会社の株も買われています。 米国コロラド州グリーンウッドビレッジに本拠を置くニューモントゴールドコープコーポレーションは去年一年間で株価が25.37%も上昇し、 カナダのトロントに本社を置く、世界で2番目に大きい金鉱会社であるバリック・ゴールドに至っては去年一年間で株価が37.37%も上昇しました。 トランプもFRBもアメリカ経済は好調と言っている割に景気を底上げするような利下げを行っています。実際に統計的にはアメリカ経済は信じられないほど安定しているのに、 なぜ安全資産のゴールドの値段がひたすら上がっているのか、世界的にどのメディアもまだ統一の見解を出せていないようです。 https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-10-30/fed-cuts-rates-by-quarter-point-while-hinting-at-a-policy-pause https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-18/PY1GUXDWX2PX01 https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-09-18/fed-makes-second-straight-rate-cut-splits-on-further-action https://www.reuters.com/article/us-global-markets/global-stocks-end-2019-near-record-highs-dollar-slides-idUSKBN1YZ035 2019年を通して、大局的に日本人にとって最も大きな要素は 米中貿易戦争 Brexit ソフトバンク・ビジョン・ファンド の3つだったと思っています。簡単にまとめると、日本経済の内需はすでに行き詰まっており、輸出は中国とアメリカに頼り切りです。その両者がお互いの貿易量を減らしているわけですから、日本の輸出に直接影響を及ぼすのは当然です。日本が輸出で得られる利益は単純に中国とアメリカの消費の総和に相関していますから、どちらが勝っても負けても争うことで総和が減れば日本は損しかしません。Brexitはこのようには日本には直接影響を及ぼしませんが、ポンド安や世界経済の不安定化で間接的に日本に影響を及ぼします。また、ソフトバンク・ビジョン・ファンドは最終的に破綻すると読んでいます。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの有利子負債は現在15兆円と発表されていますが、これは日本の一年の税収の約1/4に相当します。破綻時には確実に銀行連合を通して日本の血税が使われると踏んでいます。 まず、米中貿易戦争で最も大きく伸びたのはゴールドの価格でした。上のチャートを見てもらえば一目瞭然ですが、2011〜2013年の時期に次いで高値を記録しています。(https://www.bullionvault.com/gold-price-chart.do#) 2019年始めの価格がオンスあたり約1290米ドルで、1517米ドルで年を終えたわけですからだいたい17%の上昇でした。2018年の8〜9月頃に買った人はかなり利益を出したのではないでしょうか。 ゴールドは安全資産と言われ、買ってもほとんど儲かりませんが有事などの際は価格が下がらずむしろ上がります。1年を通してこれだけ上がった背景には、米中貿易戦争というリスクがあります。 日本のメジャーな報道ではほとんど語られませんが、去年からブルームバーグなどでは1日に10回以上「地政学的リスク」という単語が語られるようになりました。もはやただの貿易紛争ではないということです。 安全資産には他に米ドルと日本円があります。多少のリスクの場合は、これらの通貨にまず投資が避難する傾向があります。 長年、米ドルとゴールドの価格は逆相関することが知られてきました。2019年という年はゴールドが勝った年と言えるでしょう。米ドルが買われなかった主な理由としては、上の米中貿易戦争があります。米中貿易戦争に関する悪いニュースは全てゴールドの価格を押し上げる傾向があります。 ただ、興味深いことに12/15に第一段階の米中貿易合意がなされたにも関わらず、ゴールドの値段は下がりませんでした。それどころが年末はクリスマス前のオンスあたり1485米ドルから1517米ドルまで猛烈に上がりました。これはもはや市場がただの貿易戦争ではなく、「地政学的リスク」として認識しているからにほかなりません。 ただし、これは日本以外での話です。 |
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